プロローグ
2022年、1月下旬ーー
私は迷っていた。
時間の使い方についてだ。
卒論や1月〆の仕事が全て片付いたため、5日ほどの暇ができたのである。
Twitterにアップする用のイラストを描きためようかな?
noteにアップするエッセイを書きためようかな?
いくつか案を出したが、いまいちしっくりこない。
そんなことは、仕事がある時にでも出来る。
2月からはまた仕事で忙しくなってしまうのだから、今のうちにドでかいことをやっておきたい。
そこで私は、ひらめいた。
「そうだ、小説を書こう」
ちなみに私は、これまでの人生で小説を書いたことは一度もない。
完全なるド素人だ。
でもせっかく書くのならば、賞に投稿してみようじゃないか。
そう思い立った私はGoogle先生に小説賞情報を聞き、めぼしいサイトを探した。
【1月末〆切 〇〇小説賞 募集中!!】
これだ!
これに出そう。
もう私に、迷いはない。
ーーこれは、私白森が
〆切日まで残り5日しかない小説賞へ投稿するために
3万字の小説を4日で書き上げようと無茶する物語であるーー
この記事の登場人物
白森さわ(シラモリサワ)
・これまでの人生で小説を書いた経験はマジのマジで1度もない。
それゆえ、小説3万字執筆がどれぐらい大変なものなのかも正直よくわからずにこの挑戦を始めた。
・職業:漫画家/イラストレーター
・文章を書くことが好きで、時々ブログやエッセイをネットにUPしている。
・webおもしろ記事の賞を取った経験はある。
1日目
いつか小説を書きたいと、前々から思っていた。
そのため、幸運なことに起承転結シート(※プロット的なもの。ちゃんと細部まで詰められているとは言っていない)を数ヶ月前に制作していたのである。
3時間程度で作った簡単な内容のものだし、マジで簡単な流れしか決まっていないが、何も無いよりはマシだろう。
今回はこれを元に、小説を書いていくことにする。
だが、小説を書いた経験など一度もないため、どういう塩梅で書けば良いのか全くわからない。
そもそも1章ってどれぐらいの長さだったらいいの?
目標字数が3万字だから、1章2000字×15章とか?
とりあえず闇雲に紙を文字で埋めていく。
基本的な原稿用紙の使い方についてもよくわかっていなかった。
小学校で習う「文頭は1字下げる」というルールすら途中まで忘れていた。
また、私はMAC使いのためPCにWordが入っていない。
賞規定の原稿用紙設定にできず、困り果てることになった。
仕方がないので、字数の管理や原稿用紙設定ができるような小説用エディターを探そうと思いGoogle先生を召喚。
諸々吟味した結果、今回は「Nola」(@NolaNovel)というサービスを使って書いてみることにした。
詳細は後述するが、Nolaで原稿データをdoc形式書き出しすることは不可能(2022年1月現在)なので注意。
しかしそれ以外の点ではめっちゃ使いやすいのでおすすめだ。
基本無料でここまでできるのはすごい。
運営の方々のnoteも拝見したが、とてつもない努力と誠意を感じた。
この日は午後にバイトがあったため、午前中と移動中にしか執筆ができなかった。
1日目の作業時間:約5時間
1日目の進捗:5000字
累計字数/目標字数:5000字/30000字
2日目
今日以降はバイトもなく、全日作業ができる。
しかし余裕は全くない。
目標字数3万字を達成するには、今日含めた残り3日で25000字書かねばならぬのだ。
私は充血して濁った眼でモニターに向かった。
はやく書き進めないといけないのに、ついつい前の章の推敲をしてしまいなかなか進まない。
今は正直、質を追い求めている場合ではない。
まず3万字書き切ることが大切だと自分に言い聞かせて、納得の言っていない箇所があっても無視して書き進めた。
また、2日目でようやく「3万字完結の小説だったら、10章構成で1章あたり3000字前後だとちょうどいい」と気付いた。
2日目の作業時間:約12時間
2日目の進捗:9000字
累計字数/目標字数:14000字/30000字
3日目
ひたすら書く。
私が思っていた以上に、小説を書くには頭を使う。
漫画で例えると、ネーム作業をずっとやっているような感じなのだ。
……読者の中に漫画家がいなければ全く伝わらない例えで申し訳ない。
ネームというのは、考えた物語を漫画の形にするために、コマ割りやコマ内の構図やセリフを考える作業のことである。
つまり、頭を使う。
だがネーム以降の作画作業では手しか使わない。
作画中はラジオを楽しんだりフェイバリットオタクソングを聴いたりできるので、精神的にはそこまで疲れなかったりする。
だが小説!
お前ってやつは!!
ずっっっと頭を使わせやがって!!!
しかし、小説にもいいところはある。
ずっと集中しないといけないが、書けばすぐ終わるところだ。
漫画の場合、ネームの後も下書き・清書・仕上げ云々で工程がめっちゃ続く。
小説に比べて漫画は完成までにめっちゃ時間がかかるのである。
またページ数的にも、小説の方が短く済む。
小説3万字分(約50p)の話を漫画で描こうとすると、おそらく単行本1、2巻分(約350p前後)になるだろう。(※白森調べ。根拠はない。)
総合的に言えば小説の方が短い時間と短いページ数で自分の書きたい物語を完成させられるのは良いなと感じた。
小説執筆中はずっと頭を使うので、お腹が空きがち。
業務スーパーで入手した「ずんだ団子」を食べた。
おいしかったよ。
3日目の作業時間:約13時間
3日目の進捗:11000字
累計字数/目標字数:25000字/30000字
4日目(最終日)
締切日自体は明日なのだが、私は「絶対〆切前日までに終わらせるマン」である。
本日4日目ですべてを終わらせて投稿まで完了させる決意を固めている。
昨日の時点で25000字まで書き終わっていたため、気分的には楽だった。
だって残り5000字書けば良いのだから。
ーーしかし、現実はそう甘くなかった。
目標字数30000字はクリアできても、30000字で物語を完結させられなかったのである。
物語を終わらせなければ、賞には応募できない。
幸い、私が投稿する賞の字数制限は「30000字以上」でありオーバーしても問題なかった。
物語が終わるまで筆を進める。
完結できるか不安だったが、35000字で物語の幕閉じに成功。

証拠のスクショ(モザイクで何もわからない)
推敲などにも時間を使いつつ、深夜1時には書き終えることができた。
……本当だったら完成してから数日置いて、再度推敲した方がいいんだろうけどね。
4日目の作業時間:約15時間
4日目の進捗:10000字
累計字数/目標字数:35000字/30000字
いざ、応募!
作品を書き上げただけでは、賞への応募は完了しない。
まず、必要記入事項の記入を行う。
必要記入事項のひとつに「これまでの投稿歴・出版歴」を書かされる項目があった。
普通に考えれば「小説の」投稿歴・出版歴を聞かれているのだろう。
だが私のように、小説歴は一切ないが漫画の出版経験があったりする場合、その旨を記入した方が良いのかわからず迷った。
漫画も一応、ストーリーを考えたりする仕事だから小説と無関係ではないよね?
どうするのが正解だったんだろう?
記入事項の次は「1000字弱のあらすじ」だ。
時間がかかるかなと思ったが、意外とすぐに書けた。
私の普段の行いがいいからだね。
よかったよかった。
最後に、作品データの生成である。
私のMacPCにはWordがないため、1行あたりの字数と1pの行数を指定した原稿が作れない。
すなわち、賞規定の原稿用紙設定のdoc形式原稿が作れないのだ。
その上、執筆に使用した「Nola」でもdoc形式書き出しは不可能(2022年1月現在)だった。
ということで私は「.txt形式」データで提出することにした。
私は優しいので、Macでの.txtデータの作り方をみんなにも教えてあげるね。
流れは下記の通り。
(1)「テキストエディット」を起動
(2)メニューバー>フォーマット>標準テキストにする をクリック
(3)標準テキスト状態でファイルを保存すれば自動で.txt形式になる。
以上。
できた?
私に感謝してね。
感想
書き始め初日は「まあ〆切までに書き上がらなくても最悪いいや。しゃーなし」と気楽に構えていた。
だって、小説執筆未経験の素人のくせに〆切5日前から着手して作品を仕上げようなんて、そんなの無茶だろう。
完遂できなかったとして、一体誰が私を責められるだろうか?
だが、執筆字数が10000字を超えてくると「ここまで書いたのに間に合わなかたら悔しい」という意識が芽生えてしまった。
これが〆切の魔力か……
また、これまで私が「小説を書いてみたいなぁ」と思いながらも手を出せていなかったのには理由がある。
「自分の執筆スピードが不明なゆえ、時間が読めずスケジュールが立てられない」からだ。
だが今回の無茶チャレンジにより、自分の時速が判明した。
これは大きな収穫だった。
今回の執筆スピードは平均「1000字/1h」。
これが遅いのか早いのかは正直よくわからないが、まあそんなもんだろう。
1日の作業時間を集中力が保てる5時間以内に収めた上で
ちゃんとプロットを作ってから執筆すれば「2000字/1h」を目指せそうな手応えはあった。
一日中作業をする日は、中弛みしがちだ。
長く作業をすれば良いと言うわけではないんだね。
むしろ全日執筆するよりも、仕事の合間に書き進める方が効率よく仕上げられそうだ。
あと、漫画や絵と違って小説執筆は作業環境を選ばないのがいいね。
パソコンもしくはスマホさえあればどこででも作業できる。これは素晴らしい。
最終日は徹夜する覚悟でいたけれど、案外早く終わってほっとした。
なんだかんだでこの4日間、1日も徹夜せずに朝起きて夜寝る生活を守れたぞ!
これまでの漫画家生活でも一度も徹夜したことはないから、もしかしたら私には徹夜しない才能があるのかもしれない。
褒めて欲しい。
<結論>
小説を書いたことがない素人でも、
頑張れば4日で3.5万字の小説を書き上げられる
検証翌日にこのレポ記事を書けるぐらいの気力も残っている。
また、連日1日1万字書くと数千字の記事が楽に感じられるようになるというメリットもあるぞ!
(現にこの記事(約4000字)の執筆もだいぶスムーズだった)
小説執筆は、思っていたよりも苦しくなかった。
そして、思っていたよりも楽しかった。
みんなも小説を書こう!