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喪女が¥15,000払って資生堂メイクレッスンに行った話

 

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ザギンに舞い降りた喪女

 

2019年3月27日、夕方。

平成最後の春を予感させるやわらかな風を頬に感じながら、私はシャレオツシティ銀座に足を踏み入れた。

立ち並ぶ高級ブランド店の外壁は、毎朝匠が汗を流しながら磨いているのかと思うほどぴかぴかで、どうにも不自然である。

 

パンピー、ノーサンキュー!

セレブリティ、ウエルカム!

 

街全体からまきちらされているザギンの高尚な雰囲気に思わず気圧される。

 

どうして私はこんな場所にいるのだろうか。

場違いにもほどがあるのではないか。

 

森の中に放り込まれたアザラシの気持ちになりかけるも、打ちひしがれている場合ではないと気合いを入れ直す。

今日は目的があって、わざわざザギンへ足を向けたのだ。

決して不用意にサイタマからお上りしてきたわけではない。

 

私は身を縮こまらせながら中央通りを抜け、せこせこと目的地ー「SHISEIDO THE STORE」へ向かった。

 

キャ○メイクしか使ったことありませんが?

 

私筆者はぴちぴちの19歳。

しかし残念なことに、若い女性であれば好き好んで収集するであろうメイクや服に関する知識が皆無である。

 

大学へはほぼすっぴんで向かうし、帰りにジムへ寄れるように普段はジャージ。

休みの日に遊びに行くような人種でもないため、週の半分は家でパジャマを装備している。

所持している化粧品は、高校生の時にマツキヨで買ったキャ○メイク。

電撃萌王には千円出せるが、ファッション雑誌に払える金はゼロ。

大学生になってから新しく購入した服は、好きな声優のライブイベントで買ったヲタクTシャツくらい。

 

なんたる惨状。インド人もびっくり。

 

別に美容に無関心な訳ではない。

むしろ人より美に対する関心は高い方だと思う。

趣味は美少女ウォッチングだという点からも、

いかに私が美しいものを慈しむ文化的でゆたかな心の持ち主であるかが窺い知れる。

しかし、いかんせん私の美意識は顎研究といった「自分自身を変える方向」に全振りしており、

「上っ面を取り繕う」化粧や服に向かなかったのだ。

 

一方で、化粧は社会的な身だしなみでもある。

いくら自分では「化粧なんか意味がない」と思っていても、いずれちゃんと化粧をしなければならない時がくる。

結局化粧をしなければならないのなら、しっかり基礎を勉強して上手にできた方が良いだろう。

 

「メイクを習いたい」

 

…そんなメイク初心者の需要に答えた「メイク講座」たるものが、トウキョーでは夜な夜な開催されているという情報をインターネッツの海でキャッチした。

なかでも「資生堂のメイクレッスン」はとっても人気があり、予約戦争が勃発するのはあたりまえ・1ヶ月待ちがデフォルトらしい。

 

資生堂が開催しているメイク講座の中でも、一番スタンダードなコースは「ゴールデンバランスメイクアップレッスン」。

価格は税抜き¥15,000。

 

…去年からずっと労働三昧な私は、春休み中も宇宙戦艦ヤマトの映画を見に行った以外、本当になにもしていない。

これが華の女子大生の春休みなのか…?

一応仕事の進捗も順調だし…1日、それも夕方からお出かけするくらいなら許されるよね…

労働以外何もしていないおかげで金ならあるし…

ダメ元で予約してみようかな…

 

そう思い立って、先週の23日に資生堂のウェブ予約フォームにアクセスしてみたところ、なんと4日後の27日にだけポツンと空きが。

きっと私の惨状を見かね、神様が手を差し伸べてくれたのだろう。

 

こうして私は、諭吉と一葉という尊い二名の犠牲とひきかえに「ゴールデンバランスメイクアップレッスン」を受ける資格をあっさり獲得したのだった。

 

いざ、出撃!

 

エレベーターボーイの懇切丁寧な接客に対し不敵なオタクスマイルを浮かべ、どうにかやり過ごした私はようやくお目当のフロアへ。

 

…自分以外に客がひとりもいない。

それもそのはず。

「ゴールデンバランスメイクアップレッスン」は個室で一対一で行われるメイクセッションである。

挙動不審になりがらも、メイクセッション担当のおねえさんにいざなわれて白い照明がひかりかがやく個室の中へ。

蛍光灯にフラフラと群がる寿命間近の蛾の様子が、今の自分と重なって見えた。

 

 

着席。

机上に用意されていたボルヴィックをおもむろに一口飲み、どうにか精神統一を図る。

どうやら緊張で口が乾いていたらしい。

いつもよりボルヴィックがおいしいなぁと現実逃避しながら、夢中でゴクゴク飲んだ。

 

すると担当のおねえさんが、こちらの緊張を溶かすように完璧な営業スマイルを浮かべ

普段使用している化粧品の種類や色、所用時間などを確認するアンケート

を差し出してきた。

 

どうやらこのメイクセッションでは、「自分が持っている化粧品で・すぐ自宅で再現可能な」メイクを教えることを重要視しているようだ。

もちろん自ら購入したいといえば対応してもらえるのだろうが、担当さん側から資生堂の化粧品を売りつけてくることは一切なかった。

 

さすが、ザギンの資生堂。

 

感心している間に、どんどんセッションは進んでいく。

 

流れは以下の通りであった。

 

1:アンケート記入

2:セルフメイクの顔撮影

3:化粧落とし&化粧水ぺたぺた

4:すっぴん撮影

5:顔のバランス測定

6:肌色測定(ここの順番はちょっとうろ覚え)

7:5&6の結果が印刷されたシートをもとに、「黄金比」説明

8:実践メイクレッスン

 

 

3の「化粧落とし&化粧水ぺたぺた」はおねえさんがやってくれる。

繊細で丁寧な指使いに、おもわず喪女は昇天してしまった。

高級エステに行ったらきっとこんな感じなのだろうと、叶わぬ夢が虚しく広がる。

 

 

7で渡される「5&6の結果が印刷されたシート」はこちら。

 

 

ゴールデンバランスチェック箇所は、輪郭、目、鼻…などの8つ。

だがしかし、私の顔で「ゴールデンバランス通り」だと判定されたのは眉のみであることが判明。

自分の顔がゴールデンでないことは自覚していたので、もはや悲しくもならない。

 

 

そして大本命、8のメイクレッスン。

まず、ゴールデンバランスに近づけるべく、メイクポイントをレクチャーしてもらえる。

そしておねえさんがお手本として半顔にメイクをしてくれたのち、それを真似してもう半分の顔は自分でメイクする流れだ。

 

メイクの濃さや、どういった仕上がりにしたいのかはメイクレッスン中になんども確認してくれる。

私は「基礎が知りたい」一心でこのセッションを受けていたため、「はい!これでいいです!特に要望はありません!」を連呼するマシーンと化したが、

「もっと目元を華やかに…」「かわいらしくみせたい」など細かい要望がある人にでも対応可能なセッションだと思う。

 

 

そんなこんなでゴールデンバランスメイクアップレッスン終了。

 

 

最後に

「メイクポイントを事細かにおねえさんが記載してくれたシート」と

「ビフォーアフターシート」

がもらえた。

 

「メイクポイントを事細かにおねえさんが記載してくれたシート」

 

 

私はすでにインターネッツに顔を晒しているピーポーなので、もうこれ以上失うものはない。

証明写真・卒アル並みの黒歴史感だか、ビフォーアフターシートも掲載しておく。

 

「ビフォーアフターシート」:自分メイクの写真(ビフォー)と資生堂メイクの写真(アフター)が並べられている。アイメイク記録用に、目を閉じた写真も撮られた。

 

私は「メイク方法の基礎を教えてくれ」「派手なのはちょっと…」と伝えてセッションをおこなった。

そのため上の写真ではあまり違いがわからないように見えるが、実際の仕上がりはかなりきれいだったと、資生堂の名誉のために補足しておく。

 

 

結論:資生堂のメイクレッスンは超丁寧

 

資生堂のメイクレッスンは超丁寧。

15000円の価値はあると思う。

ただし、私のように「なにがわからないのかもわかりません!」状態で行くよりも、「自分は何が苦手なのか」「どういうメイクにしたいのか」など考えてからセッションに臨んだ方が有意義な時間になると思う。

 

 

 

こうして約90分のセッションを終えた私は、一生自分で買うことはないであろう高級化粧水のサンプルをお土産にもらい、資生堂を後にした。

セッション前は冷たく感じたザギンの街並みも、資生堂メイクを施した私のことは優しく迎え入れてくれている気がする。

 

ビバ、ザギン!

ビバ、資生堂!

 

資生堂の紙袋を片手に、軽い足取りで駅へ向かった。

 

次はザギン資生堂の3階にあるという高級サロンに行ってみたい。

まあ 無理だろうが。

 

 

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この記事を書いた人

白森 さわ まんが家・イラストレーター

絵や文章をかいたり、歌ったりしながら生きています。

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